斉藤君、顔洗った?
小学校三年の時、有る朝私は遅刻をしました。
担任の先生は私を見るなり、表題の言葉を投げかけたのでした。
山の手と下町、その両方が混在する小学校、一方はベンツで送り迎え、一方は昨日も着た、その前もそのファッションだったという具合に、スタイルがいつも想像内の世界の住民、私の靴下はつぎはぎだらけ、そして洋服の肘は、私の鼻水でピッカピカでした。
あれから60年過ぎました、そのクラス会に、とうに90歳を過ぎた先生が来られました。私の、顔を見て、洗っていないでしょと、のたもうたあの先生です。
一人一人の先生への感謝の言葉が、次々と出されましたそして私の番と成りました。私は先生に聞きました、先生何故、私が顔を洗って居ないって!!、分かったのですかと?
先生は一瞬キョトンとして居ました、でも、しっかりと思い出されました。
斉藤君、それは貴方だけに伝えたのではないですよ・・・と。
あの頃の貴方達は、誰を見ても、顔を洗う所では無かったと思っていたのですよ。
肘はピカピカ、胸からお腹は、食べ物が飛んだ後だらけ、顔は、泥をこすった後がそのまま、こんなことって日常茶判事だったわよね。
だから、それは言うまでも無かったことなのよ。
それでも、良く学校に通ってくれたわねと、私は賛辞の言葉を投げかけたつもりだったのよと、先生は、話している内に、涙を浮かべていたのです。
そうだよな、学校に来ない仲間は沢山いたよな、それ所では無かったんだよなと。
先生、ありがとうございました。でも今は、顔、洗って居ますよ、シワだらけですが。
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