水彩画 徒然なるままに

自然の光と影を求めて、水彩画を描き始めました、そして懐かしい思い出もと思いました。しかし、ただの自己満足です、興味のある方はどうぞ

居場所を求める私達

22年前、今の会社を創業し、多くのクリーニング職人さんを
受け入れた時私は、工場のレイアウトを彼らに委ねたのです。


それは半分素人の私が工場を先導するより、長年やって
来た彼らの方が、色々考えていると思ったからです。


でも、それは失敗でした。


彼らの工場設計は、それぞれの巣作りが基本となったから
です。


彼らの一番の課題は、自分のアイロン仕上げ台を何処に
置くか、でした。結果、その為の争いも起こったのでした。



今のクリーニング工場には、アイロン台は殆ど有りません。
多くのプレス作業は、プレス機の上で行われるからです。



私の提案は失敗でしたが、その提案の下で、何が彼らに
とって大事なことなのかは、分かったのでした。


それが、自分の居場所でした。


そのアイロン台の周りに彼らは、私物を持ち込み、それぞれの
城を作りました。出勤すると、その前に座り、その前で作業着
に着替え(ロッカーは有りましたが)、その前で昼飯を食べ、
その台の上で、丸くなって昼寝もするのです。


わかるかなあ、わかんないだろうなあ、って、松鶴家千とせ氏
の落語では有りませんが、この彼らの行為を私は、分かる気が
したのです。


そして、彼らだけでなく、生きとし生ける私達の探し求めて
いる大事なものは、自分と自分の身体をちゃんと包んでくれ
る、空間なんだって、思うのです。


自分はここに居ても良いと思える場所、自分は歓迎されている
んだという感覚を感じる空間、私達の人生は、それを求めてや
まない旅ともいえるでしょう。



何だか大袈裟な話となってしまいましたが、私は彼らの初めて
の行動を見ながら、そのことを確信したのでした。


人生とは自分の居場所を求め探す旅なんだと、このことに、
例外は無いんだと、経験したのです。