水彩画 徒然なるままに

自然の光と影を求めて、水彩画を描き始めました、そして懐かしい思い出もと思いました。しかし、ただの自己満足です、興味のある方はどうぞ

二つの中華丼

良く行く、会社近くの中華屋さん、なかなか味もよく、今は親父さんが引退して多分息子さんだろう(よく似ていらっしゃる)、一人で鍋を振っている、その姿が様になってきたなあと、何故か嬉しいのです。


ある日の昼食時間帯、店は非常に混雑していた。カウンターに座った私、そして直ぐに私の隣に、サラリーマン風の男性が座りました。


彼と私がやや同時に頼んだのが、中華丼でした。


こういう頼み方は喜ばれるのです、一つのメニューで二人分がこなせますね。息子さんの鍋振りにも、力が入って来ます。


そして出来上がった中華丼、ふと見ると、何故か私の方に「うずらの卵」が二つ載っているのでした。



最初は、奮発したのかな、卵二つなんてと、何となく隣の中華丼を横目で見た時に私は愕然としました。


無いのです、うずらの卵が載って居ません。


気の弱い私は、ああ!!どうしよう、本来一つずつの卵が、2対0になっているのです。お隣は気づいてはいない、でも分からないなあ、嫉妬で胸を煮え切らせているかも知れないと、私の妄想は膨らんで行きました。


言うべきか、言わぬべきか、先に一個食べてしまうべきか、もしかしたら誰も何とも思っていないかも知れないに決まって居るのですが、私は深く悩んだのです。


馬鹿らしい!!、途中でそんな心の声が聞こえて来ました。


でも私は軽くそれを無視して、非常に大胆な行為に出ました(少しも大胆ではない)、
鍋振りの息子さんにこう言ったのです。


あの~、お隣の卵が私の中華丼に入って居ますよ~って。


驚いたのはお隣でした、勿論気が付いてなんて居ないのです。そしてその次に見せたのが、何とも優しい笑顔でした。


鍋振りの息子さん、何にも言わずにお隣の中華丼に卵を一つ、加えたのでした。


詰まらんなあ、詰まらん詰まらん!!、自分の小心さに憤りながら、何でこんなことを気にするのかと。


でも、救われました・・・、お隣の笑顔に(笑)


でもなあ、これが俺なんだ、おれ自身なんだよと。