緊張の納品
某有名バレエ団に、衣裳のお届けをしました。
かなり大量のお届け、演目は恒例の「白鳥の湖」、その衣裳です。バレエ衣装は、このように、演目ごとに預かります。その預りは、まさに公演が終わった直後で、多くは日曜日の夜の預かりと成ります。
いつも、この納品の時は緊張します。
汗とドーランで汚れた衣装、匂いと脂と塩分が交叉し、何とも凄い状態なのです、それだけ演者さん達が頑張ったという証なのです。だから、綺麗にしてあげたい、何とか新品に近い状態へと、近づけようとします。
納品は100着以上、それを係りの女性たちが一点一点、なめるように点検をするのです、これは緊張します。
過去には、半分以上直してきて下さいと返された劇団も有りました、そして、その後仕事の電話は入りません。
私はその緊張の納品が、いつもより、格段に早く終わったことに ? と思いました。ニコニコしながらチェックが行われ、そして何と・・・、
ありがとうございました!!と、言葉をいただいたのです。
緊張感が一気に溶け、喜びが湧きあがって来ました。この衣裳で再び、白鳥の湖を演舞していただけると・・・・、
ありがとうございましたという言葉の中に私は、貴方のところがやった仕事は、チェックは要らないわと、言われた感じがしたのです。
ああ、やっとここまで来れたかと、ほんの少し安堵しながら、いやいや、これからもっと緊張の糸を緩めてはいけないと、自らに誓いました。
翌日、工場の衣裳担当のパートさんに、無事に納品が終わったことに、お礼を伝えました。それが彼女らの喜び、余程嬉しかったのでしょう、小さくぐっと拳を握った彼女の手に私は、何故か幸せを感じました。
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