涙のわらじ(良寛さんの逸話)
良寛さんの庵に、良寛さんの実弟の嫁 安子が訪ねてきて、放蕩三昧の息子 馬之助を諭して欲しいと良寛さんに懇願した。
良寛さんは弟宅を訪ね、甥の馬之助と二晩、酒を酌み交わしながら四方山話に興じる。
馬之助は母が良寛さんの庵を訪ねたことは知らない。馬之助の両親は、良寛さんが馬之助の放蕩を叱らないことにがっかりする。
三日目、良寛さんは馬之助にわらじの紐を結んで欲しいと頼む。土間にうずくまりながら、良寛さんのわらじの紐を結ぶ馬之助の首筋に一滴の水気が落ちた。
馬之助が驚いて仰向くと、良寛さんの目には涙がいっぱいたたえられていた。馬之助は急に心を打ちのめされたような気がして、雪の中を帰っていく良寛さんの後姿に合掌した。
馬之助は放蕩をきっぱりやめた。
(植野明磧 著『良寛さん』P21~24「涙のわらじ」より)
この物語と接する度に思うのです、人は真実にしか動かされないのだと。
ああしろこうしろと、声だけが大きい指導という怪物、その言うことを聞かないと、
駄目な奴だ、俺の言うことを聞けないのは駄目だ、と。
こういうことを言い続けられることは一つの素質かも知れませんが、時と共にその言葉達は全部自分に帰って来ることでしょう。
想いだけが溢れる人、それが良寛さんだったのでしょう。
それが涙となって溢れた、そう感じました。
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