天に口なし人を以て言わしむ ある一本の電話より
ドライクリーニング機の一部が作動しなくなった。
困った、どうしようもなく困った、今年7月のことでした。
再建中の小さなクリーニング会社、ドライ機械(注1)は、
心臓中の心臓です。
注1
ドライクリーニング機とは、石油溶剤で洋服をクリーニングする機械の
ことです。水を使わないので、ウール、シルク、水ではダメージを起こ
しがちな洋服類を、風合いも保ちながら、安心して洗えるのです。
債務超過の会社、何とか再建の道にそって山登り中なのですが、
ちょっとしたことで、いつでも心臓発作は起きます。
借りているお金は現在、利息とほんの僅かのお金を返済中です、
この実情をリスケジュールと呼び、このような会社を銀行は不良
債権と位置づけます。
何を言いたいのか、そうです、大きな買い物が必要になっても銀
行はお金を貸してはくれないのです。
借りたお金を返せない会社に、追い銭はしない訳です。
そんな山登り中に起きた、機械の故障でした、それも修理不可能
の故障でした。
機械を買わないと商売は止まる、止まると会社は潰れる、潰れる
と、債務は一斉に襲い掛かってくる、従業員は解雇、路頭をさ迷
う人も出て来るでしょう。
では、機械を買うにはどうしたら良いのか、なんて考えてる暇は
ありませんでした。
買うしかない!!と私は、動き始めました。
こうやって、なけなしのお金は出て行きました(ー_ー)!!
★長年活躍した古いドライ機です、本当にありがとうございました。
お陰様で、新しいドライ機は設置されて、稼働開始しました。
やれやれです、でも頭の中はグルグルと回り続けて、さあどうしよう
これからどうやって資金繰りをしていったら良いのかと、投げ出しそ
うになりそうな心を、抑えるのに必死でした。
また、あの資金繰りの日々が戻って来るのか、参るなあって、70歳
過ぎても資金繰りに追われる私は何と運命の良くないことかと、呆れ
たり笑ったりと忙しいです。
そんな折でした、一本の電話が入りました。
ある衣裳取引会社の社員さんからでした。
あの~、ちょっと仕事をお願いしたいのですが、それも急なお願
いで、引き受けていただけますか?
これが、豊洲の360度劇場で始まったロングラン公演の仕事でした。
私はこのタイミングに、非常に不可思議な気持ちになりました。何か
の計らいを感じたからです。
お前さん、この仕事で買いなさいって、まあそんなことはあるはずも
無いのですが、何故かそう受け取ったのです。
天に口なし人を以て言わしむ
あの一本の電話は、まさにこういうことだったのかと思わず天を見上げ
合掌した私でした。
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