水彩画 徒然なるままに

自然の光と影を求めて、水彩画を描き始めました、そして懐かしい思い出もと思いました。しかし、ただの自己満足です、興味のある方はどうぞ

宅配の思い出 2  届けられなかったモーニング

何と言っても、私の宅配の思い出で今も心に残っている一番は、このことだろうと思って居ます。少々長くなりますが、ご興味のある方はご覧下さい。


☆届けられなかったモーニング
それは世田谷区等々力のお客様で、大層私共のクリーニングをお気に入り(私の思いこみかも)でした。


ある金曜日の朝、そのお客様から電話が入りました。モーニングをクリーニングして貰いたい、日曜日に主人が仲人をするので、間に逢いますか ?、一日しか有りませんが・・・・と


私は直ぐに伺いますと、電話を切りました。


間に逢わなかったら大変なことになるわ、駄目だったら言ってねと言われ私は、大丈夫です、必ず明日の夕方、お届けしますとお伝えし、モーニングを預かりました。


金曜日に預かり、その日の内にクリーニングして、土曜日のお昼にはモーニングは出来上がりました。


私はそれを立体包装して、いつでもお届け出来るように整えました。



その時です、私に小学校時代からの友から電話が入ったのです。本当に大事な相談があると、直ぐに逢えないかという電話でした。彼の父親が、かなり良くないことは聞いて居ました、そのことかなと思いながら私は、夕方逢うことを約束したのです。


頭の中から、すっぽりとモーニングのことは抜け落ちて居ました。今直ぐにでも届けられる姿でモーニングは目の前に掛けられているのに、抜け落ちてしまったのです。


私は友のもとに出かけました、そしてしこたま呑みました、帰ったのは夜なかで、翌日の日曜日起きたのは夕方でした。しかしそれでもモーニングのことは思い出さなかったのです。


月曜日出勤、そしてそこに吊るされているモーニングを確認した時、あらゆる記憶が蘇って来たのです。頭をハンマーで叩かれたような痛さとはこのことでしょう。


しまった~!!、俺は何をしていたんだ、これくらい取り返しの付かないことはないぞ!!、でも、お客様モーニングはどうしただろうかと、そんな心配も頭をもたげました。


あの奥様のお顔が、目の前に沢山浮かびました、そういえば昨日の日曜日に留守電が沢山入っている、無言でしたがきっと奥様だろう、ご主人に一番叱られたのは奥様ではないか、私はそう思うと、居てもたってもいられず、もう使わないであろうモーニングを持って一目参に等々力に向かったのでした。


あの光景は、何十年も過ぎた今でも忘れることは有りません。お客様のお宅は高台にあり、玄関は道から見上げた所に有ります。


その玄関は開いていて、そのドアにもたれかかり、煙草を吹かしている奥様がこちらを見降ろして居ました。私が来るだろうことを見とおしていらした、そうだったのかと思います。その姿に、情けないですが私はぞっとして居たのです。


そして私の足は金縛りに逢ったように動かないのです、どうしよう、何と言おうかと、頭で言い訳を今更考えている自分がいて、それが足を止めていたのだと思います。


自然に深呼吸をして居ました、そして何故か思ったのです、全部正直にお話ししようと、そう思ったら足は自然に玄関までの階段を上がって行きました。



どうしちゃったの?


モーニング借りたわよ!!間に逢ったから良かったものの、どうしようも無いわねお宅は、主人はカンカンだったわ!!


私は頭を下げたまま、上げることは出来ませんでした。



全部話して、聞きたいわ、何故モーニングが今朝になったのかを


私は、全部正直に話しました。全部です、そしてそれが許しを乞うことにならないことも承知して居ました。


とにかく謝ろう!!、そして感謝して引きさがろうと思ったのでした。


ふーんと奥様が言ったような言わなかったような、モーニングを受取っていただき、私はその場を辞しました。



翌日私は菓子折を持って、改めて謝りに伺いました。奥様は留守で、お手伝いさんが受取ってくれました。お手伝いさんも何が起きたかご存じで、でも何故か私にやさしかったのでした。


それから一か月程でしたでしょうか、週に二回伺っていて、その後クリーニングは一切出なかったのですが、その一ヶ月目に伺った時に、ドアノブに、袋に入ったワイシャツが下がっていたのです。


○○舎じゃないよなと中を確かめると、確かに私共のノートが入って居ました、私はそれを見た途端、何故かドッと涙が溢れて来たのです。またお客様として続けて下さることへの嬉しさに、涙が自然に溢れ出したのでした。


届けられなかったモーニング、これは私の人生の、大きな楔となったことは間違い有りません。



教訓 起こしてしまったことに言い訳をしないこと



失礼しました。

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