手巾(ハンカチ)
昨年10月に鬼籍の人となった義姉の、たった一人の娘さん、乳飲み子の頃に、半年に渡り我が家で預かった「ひろえ」ちゃん、その預かっている間、毎晩のように、母恋しであろう、夜鳴き声を上げ続けたひろえちゃん。
その彼女が、30歳になろうとする彼女が、義姉の葬儀の間中、にこやかな笑顔を振りまいていた。
父子、二人となった家族、ついこの間、その父親と旅行に出かけたと聞いた。父親を癒そうと、彼女が計画した旅行だったらしい。
10月の一周忌の時も、いそいそと家庭料理を作り、参加者に振る舞っていたその姿からは悲しみのかけらも見えなかった。
彼女曰く、「お母さんは明るいのが好きだったから・・・・・と」、笑顔でそれだけを語った。
☆義姉です。
手巾(ハンカチ)という短編小説、芥川龍之介の小説が有ります。
それをテレビドラマの「相棒」の中で取り上げて居ました。犯人かもしれない婦人警官を、右京(主人公の警部)は彼女は犯人ではないと断言するのです。
何故ならと・・・・、右京は芥川の短編「ハンカチ」の話を始めたのです。
それは、最愛の息子を腹膜炎で亡くした婦人が、息子のことを笑顔で語り続けるという場面でした。少しも悲しくないのかこのご婦人はと。
その話を聞いている相手が、扇子を落としそれを拾おうとし、偶然に見たその膝の上に置かれた婦人の手元、その手元はハンカチを千切れんばかりに握りしめていたという。
笑顔の裏にある、深い苦しみ悲しみ、それを顔に出すことなく、しかし手を振るわせて我慢をし続けていたんだという、気付きの物語でした。
これを見ながら私はやっと分かったのでした。ひろえちゃんのあの笑顔は、彼女の精いっぱいの愛情だったんだと。きっと、誰もいない部屋で彼女は、深い苦しみの世界に浸り続けて来たんだと。
でも、お母さんは明るいのが好きだからと、決してその悲しみを私達に見せることはしなかったんだと、理解したのでした。
ひろえちゃん、ごめんよ、俺は馬鹿だよねえ
失礼しました。
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