とぼとぼと、帰って来ました
小学校の高学年の頃、悪ガキ三人の話です。
クラスの3分の2は、下町の悪ガキです、別に説明しなくても品位が有りませんから、すぐにわかります、そう服装も全然違うのでそれこそ一目瞭然です、私ですか?、勿論悪ガキの方ですよ(笑)
☆今の自由が丘(小学校はここから5分くらいです)、遊歩道の辺りです、おしゃれな街に成りました。60年以上前、この向こうの方に、貧しい街が有りました。今は、想像も出来ません。
靴下は継ぎはぎだらけ、ズボンはあて布、顔はあまり洗っていないのと、ハンカチ持っていないので、袖が鼻水でピカピカでした。
ある日、ひそひそ話、あの子の家は何処だと、そうだ帰りにそっと尾行しようなんてことになったのでした。
あの子とは、ミス八幡小学校と評判の子で、山の手のお嬢様なのです(そう思い込んで居ました)。どんな家に住んでいるんだろと、悪ガキには羨望の女の子だったのです。
ある日悪ガキ三人は、通るであろうルート先で、隠れていました。来た来た、見つかるなよと、彼女が通り過ぎるのを待ち、その後を隠れながら付けていったのです。
そうすると思いがけない角で彼女は曲がったのです。
驚きでした、え!!、山の手じゃないの?、俺たちの商店街の方に向かったよと・・・、
でもまあ、乗りかかった船です、そのまま後をつけたのです。驚いたことに彼女は、ドンドン、貧民街の方に向かって行きました(あの頃はまだ、バラックの街が有りました)。
そして、そのバラックの間をすり抜けて、ある一件の、これが家か!!と思わせる、悪ガキ共も驚くような小屋に、彼女は入って行ったのでした。
ただいま、遠くからでもそんな声が聞こえてきました、そうなんだ、彼女の家はここなんだと、いけないものを見たような気持ちになったのは、私だけでは無かったでしょう。
そういえばさあ、あの子の着ている服って、あまりいろいろ無いよな、と
踵を返した悪ガキ三人は、その場で秘密の約束をしました。これは、絶対に内緒だ、と、俺たち三人の秘密だと。
帰り道は、誰も口を聞きません、ショックだったのか何だったのか、黙ってとぼとぼと、それぞれの分かれ道に来ても何も言わずに、帰ったのでした。
彼女が御殿のような家の門に消える姿を想像していた馬鹿な三人組、それが全然そうで無かった、今思えば、なんてこと無いことなのに。
悪ガキの、浅い浅い心の中が、キュっと傷んだ出来事だったのです。あの子今はどうしているだろう、クラス会には来ないし、あの街の辺りは再開発でもう名残の名の字もないし・・・、
でも、あの後ろ姿は悪ガキ三人の、心のシャッターに刻まれているに違いない、きっと。
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