掃除 5
あと少しで終わります、お読みくださって
いる方々に、感謝致します。
私は21歳、大学中退でこの仕事に入りました、その21年の人生
で、本当に人を信頼したことは有りませんでした。
人は何処かに嘘があると(これ当たり前なのですが)、血気盛んな
若者だった私は、人に正しさを求めていたアホでした。
でも、いくら見回しても、自分のことしか考えていない大人ばかり
にヘキヘキもして居ました。
人生の指針よ何処に?と、思っていたのです。
朝の4時から一人で、片手にホウキ、片手にチリトリを持った、
中年の親父が掃除を始めたのです。
みな、せせら笑って居ました、アホの見本とでも思ったのでしょう。
そしてそのせせら笑いの通り、ホールは全く綺麗には成りません
でした。
それは砂漠で掘りつづける井戸のようです、雨乞いのようです、
その相撲上がりの課長が、赴任の挨拶でこんな言葉を
私達に伝えたのです。
君達が今立っている場所が、君達の現在です、そこから飛び上がって
もそこに着地するだけですと、どうか、その両足で立っている
大地の上で存分に力を発揮しませんか、と。
ふーんと私は思いました、当たり前だが、なかなかそうは
考えないと、でも具体的に何をしたらよい?、何が
出来るのですか?と
このケンカだらけの職場で、何も出来ませんよねと
その翌日からでした、朝の4時から掃除は始まったのでした。
課長は私達に言ったことを、自らに課してしるんだと
気付いたのは、それから半年も過ぎていたのです。
アホは私だったのです。
続く・・・・、
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