水彩画 徒然なるままに

自然の光と影を求めて、水彩画を描き始めました、そして懐かしい思い出もと思いました。しかし、ただの自己満足です、興味のある方はどうぞ

人の気持ちが分かる時

☆冬の朝(以前に掲載した絵です)


コルセットを注文した業者さんが、試着させながら
言いました、4週間くらいで良くなるでしょうか、と


圧迫骨折、馬鹿に出来ない怪我でした、何せ立っている
時以外は、何ともならないくらい痛いのです。


そして立っていても、歩かなければ何とかなる、そんな
具合で、歩いても相当に遅いのです。


それでも昨日は、蒲田の街に行かねばならず、電車に乗り
人がごった返す街に繰り出しました。


沢山の人達がかなりのスピードで行き交う駅中路を、違う
速さで歩くのが、こんなにも大変なことなんだと実感する
ことになったのでした。


後ろからは微かにぶつかられて、そんな衝撃でもちょっと
フラっとし、その彼がちょっと振り返りざま、ボヤボヤし
てるんじゃねえよ!!と、言われたような目つきで。


正面からは、右左とフェイントを掛けられたようなすれ違
いで、チッと舌打ちをされたような音がしたりと。


わずか100メートル程の間で、もみくちゃにされたかの
ような錯覚を覚えました。


ああ、そうだよな、私を無下にしているかのようなこの街
の喧騒は、いつもの私の姿そのものではないか、そう感じ
たのです。


何、トロトロと歩いているんだ!!、と私は、表面では敬老
のような顔をしながら、心の中では、そうではないのでした。



人の為、相手の為と、薄っぺらな愛をひけらかして歩いて
いた私、そこには一かけらの想いやりも無かったなと思い
知ったのです。


思うように一歩が踏み出せない足、それでも必死で歩まんと
思う心、通路の脇の壁づたいに手を添えてトロトロ歩いてい
ると、後ろから小さな声が聞こえました。


大丈夫ですか?と


そっと振り向くと、初老のご婦人がやさしい目を私に注がれ
ていたのでした。


ありがとうございます、大丈夫です、と


その一言で、私は救われた想いがしました。そして同時にそ
れは、普段の我が心の残酷さと裏表に気づかされるには、十
分な出逢いでした。


人の気持ちが分かる時、それは己の心の卑しさにも気づか
される時だったのです。


やさしいってこういう事かって、それは日常での、今、ここ
自分の「心の在り方」なんだと、教えられたのです。