開かずの間
原田マハ著「奇跡の人」、これはあのヘレンケラーとサリヴァン女史の壮絶な
物語のカバーバージョンですが、場所を日本の東北に移し、津軽三味線の
音色と共に語る、美しい小説となって居ます。
大きな武士の家の中に、開かずの間があり、そこにその少女は監禁されて
居ます。家族でもどうしようもない現実、その少女は三重苦でした。
ある日、その少女に家庭教師が雇われます、そうヘレンを教育したサリヴァン
女子と同じ設定です。それから壮絶な教育?が始まります。
見えない、聞こえない、話せない少女とのコミュニケーション
それは触って伝えるという気の長~いやり方でした。暴れる
少女に何度も怪我をさせられる彼女、そして閉鎖的な
武士の家のプライドに挟まれて苦悩します。
ある日、その家の勝手口に、ゴゼ(盲目の三味線弾き)が来て
三味線を弾くのです。それは少女には聞こえないのですが、
その振動は妙に琴線を刺激したのでした。
少女はそのゴゼの少女が来るのを待ち遠しくなるのです。
そして少女同士は生れて初めての友、心を開いた友となるのです。
物語の冒頭に、ある老婆が登場します、そうです、少女と初めて
交流をしたあのゴゼの少女の後年の姿でした、もう誰が
頼んでも、三味線を弾くことは有りませんでした。
そこにある記者が訪れて、その老婆に耳打ちするのです。
むくっと顔をもたげたその老婆の目には一杯の涙が溢れます。
そして一言、逢いたいと
こうやって始まった物語は壮絶で有りながら、爽やかな
読後感を覚えました。ご興味ある方はどうぞ
私達の心には、何処かに開かずの間が
有るのだと思います。
それは恥ずかしいものを隠す部屋なのかも知れません、
でも恥ずかしいものって何でしょう、でも隠すことで
もっともっと、表に出せないものになることは
明白です。
特にこの閉鎖的な日本では・・・・、
もとゴゼの老婆は、ある会場で津軽三味線を弾きはじめます、
あの方に聴いて貰う為に、たった一人の友人に捧げる
為に
いつしか会場の後ろの扉が開き、上品な夫人が現れます、
開かずの間の少女です、もう涙をぽろぽろと落しながら
静かに着席をするのでした。
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