水彩画 徒然なるままに

自然の光と影を求めて、水彩画を描き始めました、そして懐かしい思い出もと思いました。しかし、ただの自己満足です、興味のある方はどうぞ

トカトントン

太宰治の小説にトカトントンがある、変わった内容です、以下あらすじですので
読んでいない方にはネタバレですので、ご注意を。



時代は敗戦直後。


26歳になる男性がある作家に手紙を出す。それは男の悩みを綴ったものだった。


玉音放送により日本が戦争に敗れたことを知った男は、体が地の底に沈むよう
な感覚に襲われ、死ぬのが本当だと思いつめる。


しかしその時「トカトントン」という金づちの音が聞こえ、その想いは跡形も
なく消え去るのだった。


その後も恋愛、スポーツ、仕事など熱意を傾け、それが絶頂期を迎えるたびに
「トカトントン」という音が聞こえ、その瞬間、男の情熱は消え去るのだった。


その手紙を受けた作家は、聖書の一文を添えて返信するのであった。



トカトントンという軽い音が聞こえると、熱意が削がれるという男性の悩み。


作家(太宰治)はその悩みにどのような回答を出すのでしょうか?



太宰は、確かに回答を出すのですが、それはなかなか理解不可能です、そして
このトカトントンの音を聴くのは、太宰自身だったと有ります。


自分で悩み自分で回答を出そうとした彼、トカトントンという音は
その比喩だったのでしょう。



さあもうこの小説は完成だ!!と思った瞬間に、トカトントンと音が鳴る
それを聞いた太宰は、千ページもの原稿を破いたとか


何と繊細な、何と大胆な、そして何ともったいないと
私のような凡人は思うのです。


この小説は、太宰自身が自らを絶つことの道しるべなのかも
知れません。



突然曲を掛けなくなったミュージシャン、もうヒット曲は出来ない
のかと心は不安定になり、薬に手を出したりする


これほどでも無くても、私達は突然何もしたくなくなったという
心のポケットを感じることは有ります。


昨日まであんなに楽しかったのに、今日は何でこんなことが
楽しかったのだろうと、????に包まれる



何でしょう、それを太宰はトカトントンと著しました。


私は思います、トカトントンとは、己の魂に釘を打つ音
なのかと


そうであれば、彼が自殺したことのほんの一部が見え隠れ
する感じがします。



何もかもが馬鹿らしくなる、トカトントンとは聞こえないが
もうどうでも良くなる、そう心が感じたら


そっと胸に手を置き、魂に語り掛けるのも一考と思います、
今は駄目なんだねと、少し休もうねと、


私は会話をします、多分それは毎日。