思い出 母の愛
母は晩年、肝臓がんに掛かり、あっと言う間に鬼籍の人と成りました。診断を受けてから3ケ月でした。もともとせっかちな性格、死に行くのも、このようにせっかちだったのです。
もうあまり時間はないと、ご家族の方、どなたかお部屋に泊まっていただけませんかととの提案を受けて、私達兄弟姉妹は、交代で泊まりました。
何か有ったらすぐにナースに知らせるというのが、主な役目でした。
母はもうほとんど目を瞑っているような状態で、傍で寝ていても、母との交流はもう出来なかったのです。
ある日私は物凄く疲れていて、それでも今日は当番だからと、母の傍で横になり、直ぐに爆睡してしまったのです。
その夜中でした、ふと私の背中に布団を掛けようとするのを感じ私は目を覚ましました。お袋が?と、まさか!!と、それから私はじっとしながら、ずっと気づかないふりをしていたのです。
何で、母は虫の息では、自分のことで一杯なのでは?と思いながら、背中に掛かり始めた布団を感じながら、私は、ボロボロと涙が止まりませんでした。
こんな状況にも関わらずに、私のことを心配している母、こんなに弱っても、母は母のままだったのです。
母の愛、私はこんなにもそれを感じたことは有りませんでした。
ずっとずーっと働き続けて来た母、私の幼稚園の運動会にも、ごめんねヤスオと謝る母、私は一度も、母が寝る姿と、起きる姿を見たことは有りませんでした。
お母さん、ごめんよ、何も全然親孝行なんて出来なかったよ、ごめんねごめんねと言い続けながら私は、背中に母を感じ続けていたのでした。
母はそれから一か月ほどで、旅立ちました。享年62歳、何故かその日は、クリスマスの夜でした。
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