水彩画 徒然なるままに

自然の光と影を求めて、水彩画を描き始めました、そして懐かしい思い出もと思いました。しかし、ただの自己満足です、興味のある方はどうぞ

パートさんの涙

パートさんが泣いていた


ちょっとした時間の隙間で、気づかなかった


たった一人の職人さんが、泣かせた?
いや、彼が知らない内に泣いていたのだろう、


パートさんにプレス機の指導、何度も何度も教えていく
そうではない、ああでもないと、千差万別の服達の
プレスを教えていく


その内に、出来ない自分にいらだつのか、その指導の
厳しさにヘキヘキするのか、だんだんと涙が
溢れるのかも知れない


泣いている、気づいた私は直ぐにその指導の場に駆けつけた


私は職人さんに声を掛けた、案の定彼は、彼女が溢している
涙に気付いてはいなかった、


一生懸命な職人さん、それを受け切れなかったパートさん、
でも、その一生懸命さはパートさんに伝わっていた


涙を拭いて、またプレス機に向かう彼女に私は
エールを送った、


頑張れ!!、貴女なら出来ると・・・・、



何をするにも一生懸命、その後姿は素敵だ、
言葉なんか要らない、彼は寡黙だが、それは何の障害にも成らないんだ


彼は新潟からちょっと入った村の出身、中学を出て
東京のクリーニング店に集団就職したのだ


そう、あの集団就職の時代の彼、沢山の熾烈な環境を
潜り抜けてきた彼、しかしそのクリーニング店は
廃業した、


彼が私共に来たのは、彼が40歳くらいか、そして頑張って
今があると言いたいのだが、その会社も潰れたのでした。


新しく創業した会社、小さな小さなその会社に彼は、
一緒に参加してくれた、9人の職人さんの一人として


そしてそれから20余年、彼はたった一人となった、
周りは全員女性のパートさんという環境の中、
彼は益々寡黙となったのです。


アイロンを投げられたり、鍛えるという名目のイジメを
潜り抜けて来た彼、寡黙になるのは当たり前だったろう


変わらないのは彼の一生懸命さ、多分それしか自分の
取り柄はないと知っているようだと


しかし、時折その一生懸命さが、表題の結果を生むのです。



パートさんが泣いている、でもそれに気づかない彼は、
これからも多分、気づかないのかも知れない。


パートさんと向かい合った私、彼女は全てを理解していた。



でもちょっと不安だったのは私、もしかしたら彼女明日は
出勤しないかも知れないと案じたのでした。


しかし、翌朝の彼女の出勤する姿を観て、私自身の疑心暗鬼
を反省したのでした。


全てを理解して居なかったのは、私だったと。