水彩画 徒然なるままに

自然の光と影を求めて、水彩画を描き始めました、そして懐かしい思い出もと思いました。しかし、ただの自己満足です、興味のある方はどうぞ

父とリンゴ

私のいや、兄弟全員の思い出です。


私達兄弟がまだ小学生の頃、父は働きづめで、ほとんど私達と関わる
ことはありませんでした。


父親とキャッチボールとか、一緒に出掛けるとか、殆ど無かったですねえ


そんな父でしたが、あることでは良く私達に関わって来たことが有りました。



それが父のリンゴ剥きでした。


秋になると、田舎の友人がリンゴを贈って来ました、それを父が何故か
私達に振る舞うのです。


私達兄弟は、それが恐怖の時間であることも共有して居ました。



父はおしゃれでした、仕事に向かう時真夏でも麻の背広を着て、ピカピカ
の革靴、そして中折れ帽子を被ります。その帽子が包む頭の毛はポマード
でベタベタでした。


そんな姿で何処へ行くかって?、父はこの姿で自転車にまたがり、クリー
ニングのお客様を訪問するのです。


そう、超高級クリーニングでしたから・・・・、ジャンパーに運動靴なんて
もってのほかでした、父は。



それはともかく、お客様から褒められたりして機嫌が良い時父は、私達に剥
いてくれるのでした、何を?って、リンゴです。


何故このことが恐怖だったのか、それは頭にごってりついているポマード
だったのです。


そのポマードの香りが先ず漂い、手についたポマードはそのままに、おも
むろにリンゴを持ち、ナイフで切りはじめるのです。


その手は、皮だけを触っているだけでなく、剥いた実も、ばっちりと捕える
のです。つまり、リンゴ全部が、ポマードの海の中となる訳です。


さあ食べなさい!!と、笑顔の父、誰も手を出さないとその「さあ」が大き
くなります。


食べない訳には行きません、私達はリンゴを手に取ると、がぶっと一息で、
食べたのでした。


そうすると、どうだ美味いだろうと、父はご機嫌なのでした。



一度このことを母に訴えました、母は一言、我慢しなさい!!って。


ポマードのタルタルソースに浸けたリンゴ、でもなあ、あれが父の愛情だった
んだよなと、二度と食べたくはありませんが(笑)


いかがですか、ポマードってご存知でしょうか、ご存じの方にはそれがついた
リンゴの味が想像出来るかと思います、実に美味しい、実にって。