水彩画 徒然なるままに

自然の光と影を求めて、水彩画を描き始めました、そして懐かしい思い出もと思いました。しかし、ただの自己満足です、興味のある方はどうぞ

直角に曲がる人

重箱ウナギの隅をつつきながら食べていた
らふと思い出しました。


あの、直角人さんどうしているだろうかと。



20数年前、会社が潰れて、私は失業保険を申請しました、
月に一回ハローワーク(昔は職業安定所)に通い
ました。


沢山の失業者が溢れるハローワーク、申請書を
書き、順番を待ちます。


毎月(一か月置きだったか)聞かれることは、
この間にどんな就職活動をしたか、でした。


これは適当でした、とにかく失業保険を貰うこと
それに集中して居ました。


今日は、このことではないです、ハローワークに
行くと、必ず逢う、きちんとした身なりの先輩
さん、いや必ずは逢わなかったか


余りにも印象的なので、その行動が脳裏に刻まれ
たのです。



かなりの数の椅子が並べられ、審査官から呼ばれる
までそこに座って待機します。


その人が呼ばれました、その後の行動が可笑しかった
のです。


彼は、呼ばれたと同時に、審査官とは反対に歩きはじめた
のです、本当です。そしてその部屋の後ろの壁まで歩き
壁にぶつかる寸前に90度に曲がるのです。


そしてそのまま進み、部屋の角まで進むとまたその角に
ぶつかる寸前に90度に左折、その左折を三回繰り返し
て、やっと審査官の前に座るのでした。


部屋中にしのび笑いが広がる、審査官も笑っている、
でも顔をゆがませないように必死だったことが
わかるのです。



どうしたのかこの人はと、誰も彼を捕まえて、どうされましたか?と
聞くことは無かったのですが。


彼の目は少しも笑っては居ませんでした、私は密かに彼を
直角人と名付けました。


歌舞伎役者でもやっていたのか、それは分かりません。



その後直角人さんには、何度かお逢いしました。部屋の4隅
を直角に歩き審査官の前に座る、このしぐさは変わりません
でした。


家でもこうなのかなあと、誰もが思ったでしょう、ハローワーク
を出たらどうするのか、それを分かりません、きっと普通
なんだろうなあと



詰まらないことを書きました、失業とはそれくらい
人から日常を奪ってしまうものなのかと、失業には
慣れてしまった私には分からないことでした。


直角人さん、今頃どうしているだろうか、懐かしくもないですが
久しぶりにウナギを食べながら、重箱の隅をつついて
いたらふと思い出したのでした。


失礼しました。