悪い奴ほどよく眠る
昔のことです、妙に覚えています。
親父が車を持っていて、それはセドリックでした。
しかし運転するのは兄貴で、その運転の乱暴なことといったら有りません。
角を90度に曲がるので、キュキュキュキュっとタイヤが鳴ります、ななめ
に傾いたセドリックは本当に可哀そうでした。
車で大事なのは足回りと言われます、このセドリック足回りはガタガタでし
た、あと、あまり洗わないので、外見も酷いものでした。
一方、私共の道向こうに、内科医院が有りました、そこにも同じセドリック
が鎮座して居ました。しかし、違うのはその整備と、運転と、毎日毎日そん
なにワックスは要らないだろうと言うくらい、よく磨いて居ました。
さて、何故かこの二台とも、査定となったのです、新しい車を買うのが一緒
になったのでした。
道向こうのお医者(以降先生)さん、何が気になったのか兄貴に査定額を聞
きに来たのです。兄貴は、正直な男で正確な額を先生に伝えたのです。
先生の落胆顔、今でも忘れないと兄貴の口癖です。
そう同じだったのです、物凄く綺麗に乗ってきた車も、ガタガタの車も、同
じだったのです。新車への乗り換えでは、査定は年月だけを見るらしいので
す。
今このことを思い出して居ます。
同じだったな、これは人生もそうなのかなと。
あんな良い人も、あんなどうしようもない人も、人生って大差ないんだよな。
★写真はネットからです、昭和35年黒沢明監督、主演三船敏郎でした。
いや昔昔、悪い奴ほどよく眠る、なんて映画が有ったが、結構堂々と生きて
るもんな。
たった一回の人生、ガタガタになるまでエンジン回し、精一杯生きるなんて
ことも良いのかも、一方磨いてばかりで、ろくにエンジン全開しなくて、何
でそれが車かな、ですよね。
何で先生は、査定を聞きに来たんですかね、どうや!!って言いたかったの
でしょうか、多分生き方も変わったかも知れません、先生。
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